不測の事態は起きる⑥
事故の後のことをまた書きたいと思います。
あくまで自己の反省として、また類似事故の発生抑止につなげたいとの思いです。
救急車で病院に搬送された私は、全身詳しく検査され、打ち身・捻挫・擦り傷など多数のケガを
負いましたが、幸い大事には至らず、その日のうちに自力で帰宅し、そこから2週間ほどの自宅療養となりました。
この時思ったことは1つだけ、
「落ちたのが自分で良かった。」
これがすべてです。
善人ぶっているわけではありません。本心からそう思いました。
実は私の後ろにいた隊員も、もう落ちる寸前のところで3人目の隊員に引っ張りあげられていました。
私は当日病院から出張所に戻った時、「危ない目に遭わせてすまなかった」と部下に謝罪しました。
あの時、私に命ぜられるままに部下がベランダの先端に出ていたらと思うとゾッとします。
命にかかわるほどの事故、運よく助かっても彼のキャリアには大きく影響したに違いありません。
隊長として、部下を重大な事故に巻き込む寸前だったことを、猛烈に反省しました。
要救助者なし=人命危険なし、ではなかったのです。
あの時私は確かに、自分と部下の命を預かっていたのです。
事実、この出来事が私のキャリアに大きく影を落とします。
身体はすぐに回復しました。
本署へ移動となった私は、新たに創設された特別消火隊の一員として現場へ戻ります。
しかしこの時すでに、心理的には致命傷を負っていたのかもしれない、と今になって思います。
つづく…