不測の事態は起きる③
現場に着くと、2階建て住宅の正面2階の角部屋から、炎が勢いよく噴き出しています。
ただ、建物が面している道路は幅の広いバス通り、炎が出ている側の隣地は駐車場で、
差し迫った延焼危険はありません。
建物全体を見ても、ほかの部屋へはまだあまり燃え広がっていないように感じます。
私は建物1階のガレージで電話をしている居住者と思しき男性を見つけました。
「この家の方ですか?中に誰もいませんか?」
私の問いに男性が「ハイ」と答えるのを確認し、無線で本部へ「要救助者なし」の一報を入れてから、
隊の動きを確認すると、燃えている部屋めがけて、外から放水を始めています。
2階建ての2階角部屋から、何も燃えるものがない外に向かって炎が出ている、この状況。
外から放水して、外から内への流れを作ってしまうと、火勢をまだ燃えていない内へ内へと
追いやってしまい、逆効果となりかねません。
「中入るぞ!」
私は1階の玄関を開けて隊員を呼び込みます。
1階は無傷。視界もクリアです。廊下を少し進んだ先に、廊下と直角に階段がついています。
見上げると、中ほどから先は真っ黒です。
「面体着装!」
筒先とともに私の後ろについてきていた隊員2人に命じ、
濃煙と熱気の中、3人が縦になって階段を上がります。
つづく…